創作ノート:緑の王国

ティーカップに収まるほどの小さな王国。
緑色の・・・完全なる世界。
無心の、刹那的な、人工的な。
5月のような明度と彩度の高さ。

子供の頃読んだ絵本で『らいおんみどりの日ようび』(中川 李枝子 作/山脇 百合子 絵)という本が印象に残っている。
あの『ぐりとぐら』シリーズの名コンビの手によるものだ。
キャベツが好物の緑色のライオン。小学校低学年向けの楽しいお話だが、やはりビジュアルが斬新だった。

緑色のライオンといえば、錬金術。
紀元前1000年の昔から存在していた錬金術の技術。それは金属加工技術の秘教を起源とし、伝承されてきた化学の基盤だ。
古代のエジプト、ギリシア、アラビア、メソポタミア、インド、中国。
イスラムで栄えた錬金術文化は中世ヨーロッパへ、修道士たちの知の探求と異端としての教会からの迫害をへて、ルネサンス期の発展、錬金術師の伝説をゲーテが再構築した『ファウスト』、最後の錬金術師と言われるニュートンの18世紀、そして、錬金術の「思想」を継承する現代まで。
錬金術の歴史は長い。

錬金術の三原質として重要視される、硫黄・水銀・塩。
水銀は金属ながら、常温では液体であるという不思議な物質だ。
この「水銀」を象徴するのが、太陽を飲み込む緑色のライオンの図像。

Evergreen
常緑は黄金と同じく永遠の輝きを意味する。