創作ノート:時祷書7月- 草原の輝き –

『ベリー公のいとも豪華なる時祷書 Tres Riches Heures of Jean, Duke of Berry』では、7月は「小麦の刈り入れ、羊の毛の刈り込み」
穀物の収穫の季節。

小麦とまるまると肥ったたくさんの羊、「7月」はベリー公の領地が非常に豊かであることをあらわしている。
背景に描かれているのはポワティエ城。三角形の形をした美しい城だ。
ポワティエはフランス西部にあり、軍事防衛の土地で、やはりベリー公の領地。

小麦の収穫、金色に輝く美しい麦畑。
サン=テグジュペリの『星の王子さま』では、王子さまと出会ったキツネがこのように言う。

「・・・あんたのその金色の髪は美しいなあ。あんたがおれと仲よくしてくれたら、おれにゃ、そいつが、すばらしいものに見えるだろう。金色の麦をみると、あんたを思い出すだろうな。それに、麦を吹く風の音も、おれにゃうれしいだろうな・・・」

風に吹かれる麦畑の情景が思う浮かぶ。収穫時期の穀物の「金色」は豊かさの象徴だ。

7月の作品のサブタイトルは、「草原の輝き」にした。
1961年のアメリカ映画、そしてアグネス・チャンのシングルと同タイトルだが、特に意味はない。
この言葉の響きが好きなのだ。
夏の美しさを現すにふさわしい言葉だと思う。