『ベリー公のいとも豪華なる時祷書 Tres Riches Heures of Jean, Duke of Berry』では、8月は「鷹狩りに赴く貴族たち」
狩りといっても、馬に女性と二人乗りであるから行楽の要素が強いようだ。
中景には泳ぐ人々。7月の小麦の収穫を終えてのバカンスといったところだろうか。遠景にはエタンプ城。
8月の作品は「Summer Memories」
夏の思い出といえば、海辺の町で育ったためか、やはり海水浴が一番にくる。
田舎の穏やかな内海。どこまでもゆったりまったりした時間の流れ。
自転車のかご、サンダル、水着。
砂つぶはどこまでも追いかけてくる。
遠い記憶になってしまったが、子供の頃の夏を思い浮かべるとき、
あの海の、砂つぶの皮膚感覚がまだ残っているような気がする。
8月はもの哀しい。
夏の初め、永遠に続くかのように思われたというのに、過ぎ去った日々はもう戻ってこない。
そういうセンチメンタルな感情は8月独特のものだ。
しかし夏の終わりのセンチメンタリズムというのは若さの特権かもしれない。
歳をとれば、厄介なことに暑さを感じにくくなるという。
夏が夏らしくなくなり、季節がフラットになっていく。
遠い記憶もやがて忘却の彼方に消え去るのだろう。