創作ノート:A letter

詩人・田村隆一の著書に『新年の手紙』という詩集がある。
田村隆一はよく、ポーランド侵攻と第二次世界大戦に際して書かれた、W・H・オーデンの詩「1939年9月1日」を引用する。

手紙形式で書かれた「新年の手紙(その2)」という詩もそうだ。
『夜のもとで、防もなく
ぼくらの世界は昏睡して横たわっている。
だが、光のアイロニックな点は
至るところに散在して、
「ただしきものら」がそのメッセージをかわすところを
照らしだすのだ。
彼らとおなじくエロスと灰から成っているぼく、
おなじ否定と絶望に
悩まされているこのぼくにできることなら、
見せてあげたいものだ、
ある肯定の炎を。』

その後、田村隆一の詩が続く。
(中略)ぼくらの近代は
おびただしい「メッセージ」の変容の歴史 顔を変えて登場する
自己絶対化の「正しきものら」には事欠かない
ぼくらには散在しているアイロニックな光りが見えないものだから
「メッセージ」の真の意味がつかめないのです
(中略)

学徒出陣で入隊し、戦地に赴くことなく敗戦を迎えた田村にとって
オーデンのいう「肯定の炎」がいかに響いたか計り知れないが、
ジョン・レノンがオノ・ヨーコと出会ったロンドンのインディカ・ギャラリーで
ヨーコの作品(天井に描かれた小さな文字を、はしごを登って虫眼鏡で見る)を目にしたとき、
その言葉に救われたと言った、

yes

この二つは同じベクトルにあるのではないかと思う。