創作ノート:「女の一生」

双子をテーマとした作品「美しい朝」と同様、分岐点の問題。
同じような境遇にいる二人の女の運命を分かつもの、それは何か。

ほんの些細な出来事かもしれない。
大きな時代のうねりかもしれない。
自らの選択の結果か、予期せぬアクシデントか。
他の誰かの強制力というものもあるだろう。

選ばなかった、または選べなかった人生に一度も想いを馳せない人はいないだろう。
それは性別や年齢など関係なく誰もが夢想することと思う。

「ここではないどこか」と「もう一人のわたし」。
その美しい夢と、もの悲しさ。

そして、どんな女も月の支配から逃れることはできない。
古来より「月のもの」「月の障り」と呼ばれる月経。
二人の女と二つの満月。

月の女神たち、
ディアーナは、ローマ神話におけるアルテミスのローマ名。英語名はダイアナ。
ルナは、ローマ神話の月の神ルーナ。「月」そのものの呼び名にもなっている。
セレーネーは新月から満月へと、形を変える月のように3つの顔を持つと考えられるようになり、魔法との関連性もあるが、美貌の女神で、美青年のエンディミオンとの間に50人の娘をもうけ、繁殖に影響力を持つ女神とされている。
ヘカテーも同様に、3つの体を持つが、松明を持って地獄の猛犬を連れ、夜の十字路や三叉路に現れる・・・。
十字路(四角)は、日本でも平安京の「六道辻」など、霊界の入り口として捉えられている。月の中でも、新月や闇夜はヘカテーが象徴する。

ヘカテーは魔女の女神としても信仰されている。
シェイクスピアの戯曲「マクベス」にも登場し、マクベスに予言を行った3人の魔女たちの支配者として描かれる。魔女たちは、雷鳴の夜の洞窟の中で、大釜にイモリの目玉・カエルの指先・コウモリの羽・犬のベロ・マムシの舌・盲蛇の牙・とかげの足・梟の翼などを煮ている・・・。
そしてヘカテーを象徴する花はトリカブト。
ダークな女神ではあるが、一方で道祖神のように祀られ、旅人が安全を願ったり、月の満ち欠けは女性の性を象徴し、出産の守り神としても信仰されている。
女性として逃れることはできない「血の痛み」(生理や出産)、それは静かな悲しみを持って受け入れるしかない。