創作ノート:「道」

フェデリコ・フェリーニの映画作品「道」が好きだ。
あのどうしようもない悲しさ、やるせなさ。

人生に打ちのめされて立ち上がる気力もない。
そんな時があるものだ(ない人もいるかもしれないけど)。
いたいけなヒロイン、ジェルソミーナの姿を思い浮かべると、虚無感が襲ってくる。

メランコリー。
この作品では、人生の不穏さを表現したいと思った。
子供達の無垢な遊び、星の蠢き、怪しげな空。

「道」というと、タオは中国の思想。
荒俣宏さんの著書『アラマタ美術誌』の中に、道についての面白い記述があった。

タオと称して中国人がやたらと道を云々することには、非常に重要な意味があるのです。(中略)
このように中国では、視界に入っていても物理的に行けないところが多々あるのです。
そこで彼らは道を作りました。だから道はガイドです。人生の指針あるいはガイダンスという意味合いで「道」という言葉を使う理由が、そこにあります。
道を外して野宿などしていたら山賊に襲われるか、毒蛇や毒虫にやられるかのどちらかで、とにかく道の上にいなければ生きていけない。
道は移動する都ともいうことができ、いっぽう京(みやこ)は定住する道だともいえます。

メランコリーの対極にあるような実にたくましい考え方だ。