創作ノート:Requiem

野良仕事の最中に何かの虫か草にかぶれたらしく、治るまでにひと月近くかかった。
強い「かゆみ」というものは地獄の責め苦か思うほど。
まるでサタンの責め苦に喘ぐヨブ(旧約聖書「ヨブ記の主人公)のよう。
ヨブは信仰厚い善き人出あったが、それゆえにサタンにより神への忠誠を試されることとなり、財産と家族を奪われた挙句に重い皮膚病にかけられる。それでも信仰を捨てずに忠誠を守り、ついにサタンは敗北する。

ヨブの涙、日本では「数珠玉」と呼ばれる草の実。肌トラブルに耐えかねてというわけではないが、私生活でもストレスが重なり、この実を用いて作られたロザリオを手に入れた。

「幸福」と同じように「不幸」も受け取ろうではないか・・・ヨブの言葉だ。

シンメトリー(左右対称性)は、「門」の表象。この作品のテーマはいわゆる「地獄の門」だ。
うさぎとアンモナイトは地下世界のアイテム。
「キリストの心臓」と「太古の化石」を組み合わせ、ウィリアム・ブレイクの彩色画に見られるような神秘性とおどろおどろしさを意識した。

「冥府下り」はギリシャ神話のオルフェウス、ペルセポネ、ダンテの『神曲』、イザナギとイザナミ、キリストの地獄降下などなど、
様々に語られてきたテーマであり、それらはどれも暗い地下の世界だ。

・・・この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ・・・
ダンテの『神曲』の地獄の門にはこの言葉が記されている。

レクイエムはラテン語で「安息」を意味する。