創作ノート:形而上の午後

ヴェスヴィオ火山は西暦79年の大噴火で古代ローマの都市ポンペイを滅ぼしたことで知られる地中海圏最大の活火山。
この時の噴火は、歴史上における最も有名かつ悲劇的な大災害だと言えるのではないだろうか。
直近の噴火は1944年。その際も一つの村を埋没させている。

この作品で、窓辺で少女が見ているのは1794年の噴火の様子。
噴煙と稲妻、窓は過去と現在の時空の区切りとなっている。
午睡は悪夢が多いような気がするが、悪夢にうなされて目覚めた時の不穏な気配を表現したいと思った。
タイトルに使用した「形而上」とは、形がなく感覚では存在を知ることのできないもの。時間、空間を超越した、抽象的、普遍的、理念的なもの。

形而上絵画と呼ばれるシュルレアリスムの先駆けとなったイタリアの芸術的ムーブメントのその特徴は不穏、不安、違和感。
一番に思い浮かぶ画家はジョルジョ・デ・キリコ。
キリコは作風のみならず、その人物像においても不思議な画家だ。
不遜な感じがあるし、生涯を通して作風は迷走していたと言ってもいいと思う。
決して憧れの対象となるようなタイプではないけれど、とても興味をひく。

制作にあたってキリコの独特な色彩感覚をかなり意識した。