創作ノート:Happening!!

「ハプニング」は美術用語では、1950〜1960年代にアメリカを中心に広がった前衛的な芸術運動をいうが、
この作品は、広義でいうところの「突発的な出来事」としての「ハプニング」を扱った。
少女が蜂(あるいは虻だろうか)に驚いて皿をひっくり返す場面を捉えた写真。
こぼした液体は写真の額からはみ出して、三次元空間へ。
フランス語で「トロンプ・ルイユ」という「だまし絵」の技法は昔からあるが、
シュルレアリスムの画家たちが好んで用いたのは、トリッキーというより心理的な効果を狙ってのことだろう。

突然の出来事を瞬間的に捉えるという点では写真の右にでるものはないだろう。
フランスの写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソンは、
まさにその「決定的瞬間」、フランス語原題:Image à la sauvette(逃げ去る映像)をタイトルに冠した写真集を世に出した。
20世紀の写真史を語る上で最重要人物だと言える。

ブレッソンが撮る写真の中では、特別に「画家たちの写真」が好きだ。
鳩に囲まれたマティス、彫刻「歩くひと」とジャコメッティ、恋人とピカソ、渦巻くタバコの煙とマックス・エルンストなどなど。
それぞれの芸術の特徴をスナップ写真に見事に表現している。ブレッソンは元々は画家志望だったということも関係しているのだろう。