創作ノート:水の器

あじさい、学名「Hydrangea macrophylla」
英語では「hydrangea」、ギリシャ語が語源で「水の器」という意味。

梅雨の季節、雨に打たれる手毬のようなあじさいの花はみずみずしく可憐だ。
原種は日本、実に湿潤な日本の風土に合った植物と言える。
シーボルトが長崎時代の妻「滝」の名前にちなんで、名付けた「Hydrangea otaksa」の逸話も相まってロマンティシズムを感じさせる花でもあるが、
シーボルトが1828年「シーボルト事件」により国外追放となった後、滝とシーボルトとの間に生まれた娘イネの人生の記述を読むと、
なんだかなあという気持ちになる・・・。
花はそこに咲いているだけなのだが、人はなぜか思いを乗せ、印象を作ってしまう。
それは星や風や虫など、他の自然に対してもそうだが、世界のいたる地域で似通った印象になることが多いのは興味深い。

さて、この作品は「6月」をテーマに据えている。
カレンダーや学童期の月便りは必ずと言っていいほど「あじさい」が使われる。
雨のような流星を受け止める器としてのあじさい。
窓辺には幸運を運ぶと言われるツバメ。

ロマンティシズムと可愛らしさ。
色彩は琥珀色とベビーピンクを意識して構成した。