善き羊飼い。
羊のために命を捨てるイエスの比喩。
そして神に約束された契約の証、虹。
旧約聖書創世記、堕落する人類に対する失望、神は怒り、
地上の生き物を滅ぼす洪水をもたらす。
正しく生きる人であったノアとその家族、すべての生き物のつがいが箱舟に乗り、生き残った・・・。
そして、神はもう二度と地上を滅ぼすことはしないという約束をノアと交わす、その証が虹。
災害や病災は古代の人々にとって、神の怒りと捉えるしかない。
逆も然りで、虹の美しさもまた、神の御業である。
この作品で使用した写真はノルマンディーの牧草地。
ノルマンディーは「北の人間の土地」という意味だそうだ。
荒涼とした海辺の草地。カイユボットの作品にもある。
「北」という最果てのイメージ。
そこに「神」との対話という厳かなイメージが重なり合う。
羊飼いは実際、過酷な仕事であったそうだ。
身分的には社会の最下層にあり、狼や盗人から命をかけて羊たちを守らなければならない。
イエスの誕生に一番に駆けつけられたのも夜を通して番をしていたからだ。
写真の少年は仕事に身が入っていない様子ではあるが・・・。
荒涼とした大地に「契約の虹」という「希望」。
そのモチーフに合わせて、虹は色味を抑え、全体もモノクロームに近い色合いに。