創作ノート:金色の午後

「不思議の国のアリス」の作者ルイス・キャロル(本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン/数学者)。

彼がカメラを購入したのは、写真が一般に広まっていく時代と重なる1856年。
そして、その年のうちに、「不思議の国のアリス」シリーズのモデルである、当時4歳であったアリス・リデルの撮影を行っている。アリス・リデルはキャロルが所属していたオックスフォード大学の学寮長の娘。

「不思議の国のアリス」は1862年、テムズ川でのピクニックの折、このアリスのために、キャロルが即興で作った話が元になっており、キャロルは内容を膨らませながら「地下の国のアリス」というタイトルの手書きの本を作って1864年にアリスにプレゼントした。さらに、知人の勧めで加筆修正し、1865年に出版されたものが『不思議の国のアリス』ということだ。

キャロルが撮影した現存している写真の半分以上が少女を写したもので、キャロルは控えめで恥ずかしがり屋の性格であったため、大人と過ごすよりも子供たちと過ごすことが好きだったようだ。これがキャロルを少女愛の愛好者として議論されることとなるが、彼にとっての少女たちとはインスピレーションの源泉であり、性愛の対象として警戒されることに対して、彼女たちの両親にはとても気を使っていたようだ。

彼は子供時代に特別な思いを持っていた。彼にとって少女たちを撮ることは永遠の「黄金の午後」※を作り出すことに他ならなかったのではないか。
※キャロルが「不思議の国のアリス」の冒頭の詩で描いた情景、ゴールデン・アフタヌーン

この作品はまさにキャロルへのオマージュ作品。
彼がこだわっていた「子供時代」に対して、私自身も強い思いを抱いている。

作品にほぼ「大人」が登場しないというのはこのためだ。
何度か語っているが、
「幼年期は一つの生涯の全部である」というフランソワ・モーリアックの言葉、
この考えにずっとつき動かされている。