創作ノート:聖コスマスと聖ダミアヌスの埋葬

聖コスマスと聖ダミアヌスは私のお気に入りの聖人だ。
彼らは双子の医者で、医師・薬剤師の守護聖人であり、医師もしくは薬種問屋を起源とするメディチ家の守護聖人でもある。
3世紀末キリスト教迫害の時代にあって、共に斬首により殉教した。

「聖コスマスと聖ダミアヌスの埋葬」の逸話は二人が殉教した後、埋葬されるにあたってラクダが真実を語るという場面。

無償で人々に医療を施していた聖コスマスと聖ダミアヌスだが、聖ダミアヌスは一度だけ治療の礼に卵を3つ受け取っていた。
このことを聖コスマスは許さず、亡くなった際は聖ダミアヌスとは別の場所に埋葬してほしいと頼む。
人々が二人を別々に埋葬しようとすると、ラクダが「聖ダミアヌスが卵を受け取ったのは、相手の感謝の気持ちを拒絶して恥をかかせないためだった」と語ったという。

私はこの話が好きだ。
志を同じくした双子の兄弟でも分かり合えない。
追求せず、弁解せず・・・。信じることの難しさが凝縮されている。

この作品では、卵をそのままの形で用いたかったので、
殻に小さな穴を開けて中身をくりぬき、ダイレクトに貼り付けた。
卵の白を妙に際立たせることのないように、全体をホワイトスカルプチュアで仕上げた。