創作ノート:詩人の靴

大正から昭和にかけて、短い期間ではあったが斬新な作品を残した小説家・尾崎翠の短編に「詩人の靴」という作品がある。 今回の作品はこの短編のタイトルからインスピレーションを得た。 詩人の靴は燃えている! 燃えながら歩き、歩き...

創作ノート:時祷書12月

『ベリー公のいとも豪華なる時祷書 Tres Riches Heures of Jean, Duke of Berry』では、12月は「イノシシ狩り」 森の中、猟犬たちがイノシシを仕留めている。パリ郊外、ヴァンサンヌ城近く...

創作ノート:聖フィナ

私にはお気に入りのカトリック聖人が何人かいる。 オスカー・ワイルド「サロメ」に登場する洗礼者ヨハネは乙女に恋い焦がれられる賢者のイメージだが、実は荒野で生活し、ラクダの衣を纏い野蜜を食す野趣溢れる人物。その祝日が「夏至」...

創作ノート:ゴッホの手紙

1890年7月27日の日曜日、怪我を負ったゴッホがオーヴェールの下宿先にたどり着く。 体の中に銃弾が残った状態で、医師や警察に「麦畑で自らの胸部を撃った」と語り、7月29日、37歳で生涯を終えた。 その銃は発見されていな...

創作ノート:荒地

イギリスの詩人、T・S・エリオット(1888-1965)の代表作『荒地』(The Waste Land )を題材にした作品。 詩人で英文学者でもあった西脇順三郎(1894–1982)の訳が一番有名なのではないか。 このプ...

創作ノート:緑の王国

ティーカップに収まるほどの小さな王国。 緑色の・・・完全なる世界。 無心の、刹那的な、人工的な。 5月のような明度と彩度の高さ。 子供の頃読んだ絵本で『らいおんみどりの日ようび』(中川 李枝子 作/山脇 百合子 絵)とい...

創作ノート:時祷書12月/オブジェ

「時祷書」とはカトリックのキリスト教で用いられる祈祷文や聖務日課などの礼拝の手引書をいう。なぜ、そのように多分に宗教的な時祷書というものに魅せられるのか。 私が聖書の世界に惹かれるのは、人間的な物語の宝庫だからだが、15...

創作ノート:聖バルバラ(Sancta Barbara)

「聖バルバラ」は3世紀キリスト教迫害の時代に殉教した女性。 その美しさのため求婚者たちから遠ざけるべく父親によって塔に幽閉されるが、閉ざされた生活の中で信仰に目覚める。様々な拷問を受けるも神の奇跡によって傷が癒されたため...

創作ノート:12使徒

凝縮されたオブジェたる「胡桃」を12使徒になぞらえた作品。 12使徒は以下のとおり。 ペテロ 元漁師で一番弟子。ペトロとは「岩」という意味。イエスから天国の鍵を預かり、カトリックの初代教皇。 アンデレ ペトロの弟。元漁師...